デザイナー 2022.10.19

interview vol.1
─ 葉皿のリニューアル(後編) ─2021年リニューアルの葉皿についてのインタビュー後編になります。

セラミック・ジャパンの葉皿は、1995年に発表当時は様々な彩の伝統的な釉薬で生産され、和食器の雰囲気が感じられるデザインでした。2020年、海外での展示会のため、葉皿を展示する案が出され、デザイナー小松誠さんと相談を重ね、リニューアルに向けたプロジェクトが始動しました。
葉皿が最初に発売された1995年から、時代も、人々の暮らしも、流行りも、大きく変わりました。変わらないものもある中で、今のニーズに応えることができる葉皿のデザインとは何か、リニューアルを機に、これからのものづくりへの想いなど、デザイナー小松誠さんに聞いてみました。今回は前回に引き続き、インタビューの内容を中心にお送りします。

  • Q.葉皿のデザインは、どの様な発想から生まれたものですか?

    Q.葉皿のデザインは、どの様な発想から生まれたものですか?

    水を掬うために、手を器の形にする事がありますが、太古から手以外で器として用いたのは、おそらく葉っぱだったに違いないと思います。何万年も前、人類が誕生してまもなくだったのではないでしょうか・・・。そのような事から、工芸品全般では、植物の葉を模した物が多く作られています。特に陶磁器は多く、そのデザインは写実的な表現が多くある印象です。葉皿シリーズでは植物の葉を、写実的ではなく、形を整理し、抽象化したデザインにしました。

  • Q.気に入っている部分はどこですか? 小松さんが使うとしたら?

    Q.気に入っている部分はどこですか? 小松さんが使うとしたら?

    土と釉薬が窯の炎によって作りだされる偶然によって、量産品でありながら一枚一枚が異なって焼きあがるところです。毎日使う日常的な器というよりも、日常に変化をつける時、季節の変り目、何かの祝い事、うれしい時、悲しい時に使いたい器です。素材の姿がハッキリとしたもの、旬のもの、例えば筍の子、殻付の生がき、アスパラガス、枝豆、蛤の酒蒸し、パスタ、おろしソバ、ブロッコリー等々です。

  • Q.小松さんご自身で作成された葉皿の原形 は、どのように作られているのでしょうか。

    Q.小松さんご自身で作成された葉皿の原形 は、どのように作られているのでしょうか。

    マケット( 小さな模型) をたくさん作って、その中から好ましいものを選び出します。、実物大に拡大してその形を確認します。納得のいく形が見つかったら、陶磁器特有の収縮を考慮して大きめのものを作ります。葉皿は、プラスチックやアルミの板等を切り出し、2 枚を合わせて形を作り、そこに石膏を流して型をとります。さらにその型に石膏を流してまた1 つ型をとります。2 つ出来た型にスキマを作り、そこへ石膏を流し込んで本体を作り、底裏に高台をつけていき、原形を作成します。

  • Q.レリーフもご自身で彫られました。葉皿のレリーフにはどんな想いがありますか?

    Q.レリーフもご自身で彫られました。葉皿のレリーフにはどんな想いがありますか?

    量産品は型を用いて同じものが大量に作られますが、そこに様々な技法で手を加える事により、新たな表情を作り出す事が可能になります。手による絵付けも技法のひとつです。型そのものに彫り込みを入れるのは、陶磁器製造の型に用いられる石膏という軟らかい素材だから出来る事なのですが、葉皿では、このユニークな技法によって、量産品でありながら手仕事の痕跡を残すことができると想いました。

  • Q.多くの製品・作品を手掛けられてきておりますが、小松さんの中で器とはどのような存在でしょうか。

    Q.多くの製品・作品を手掛けられてきておりますが、小松さんの中で器とはどのような存在でしょうか。

    デザインの道を志してから50 年以上になりますが、作ってきたものを振り返ってみると、食器にはじまり花器、注器、茶器、酒器、照明器具や椅子机などの什器など…です。そうしてみると器のデザイナーとも言えます。私にとって器はなくてはならないものです。器にとらわれてしまっているのです。

  • Q.今現在取り組まれている事、制作してみたいもの、これからのビジョンはあるのでしょうか。

    Q.今現在取り組まれている事、制作してみたいもの、これからのビジョンはあるのでしょうか。

    20 世紀後半の世界的なデザイン活動によって、シンプルモダン、機能主義的なものがデザインの主流になり、世の中に普及しています。しかし、それだけではつまりません。おもしろいものの巾を広げたい、アンチシンプルモダンで、生活にとって快適な世界を広げていきたい。小さなメーカーの利点を生かし、大企業には出来ない、独創性に溢れていて、少量ながらも息の長い製品を丁寧に作っていきたいものです。

セラミック・ジャパンの製品シリーズの中で、多くのデザインを手掛けてきた小松誠さん。「葉皿」という1つのシリーズに限っても、インタビューからはデザインに対するたくさんの想い、素材への好奇心、探求心を感じます。他の製品についても勿論たくさんのストーリーがあるのでしょう。機会があればその他の製品についても伺いたいと思います。

国内外で幅広く活躍するデザイナーが手掛ける製品がまだまだ沢山あります。そちらの製品についても掘り下げて、皆様にご紹介していければと思います。

vol.2もお楽しみに!!